【No.2】呼吸器外科手術のTPVBカテに繋ぐPCAポンプは持続投与?ボーラス投与?両方?
Combined Programmed Intermittent Bolus Infusion With Continuous Infusion for the Thoracic Paravertebral Block in Patients Undergoing Thoracoscopic Surgery
A Prospective, Randomized, and Double-blinded Study
The Clinical Journal of Pain 2022年6月
Combined Programmed Intermittent Bolus Infusion With Continu... : The Clinical Journal of Pain
ということで、まずは論文の題について
Thoracic ParaVertebral Block (TPVB):胸部傍脊椎ブロック
Thoracoscopic Surgery:VATSの”TS”の部分。要は呼吸器外科手術。
Prospective Study:前向き研究
Intermittent Bolus Infusion:間歇的ボーラス投与
Continuous Infusion:持続投与
決まった時間にボーラス投与するようプログラミングされたもの→PIBI
決まった流量で持続注入されるもの→CI
目的:
PIBIとCIとPIBI+CIを比較検討し、最強のPCA装置を作るぞ!
方法:
エコーガイド下にTPVBカテーテルを挿入(やったことない…)
PCAポンプを繋げるわけだが、その設定を3パターン作る
①PIBI+CI
②PIBI
③CI
抜管後1時間、12時間、24時間、36時間、48時間で評価していく
追加で鎮痛薬を必要としたかなど評価していく
結果:
術後、PIBI+CI群はCI群、PIBI群よりも疼痛スコアが低かった
PIBI+CI群が局所麻酔薬の総使用量が一番少なかった
ブロックの範囲に関しては、CI群が一番狭く、PIBI群とPIBI+CI群は差はなかった
追加の鎮痛剤を必要とした患者は、PIBI+CI群が少ない傾向にあったが統計学的に有意な差はなかった
結論:
PIBI+CIが最強かも
具体的にPIBI+CIがどのような薬液と流量だったかというと、、、
PIBI:1時間ごとに0.2%ロピバカイン4mlボーラス投与
CI:0.2%ロピバカイン4ml/hr
PIBI単独群:同薬を1時間ごとに8mlボーラス
CI単独群:同薬を8ml/hr
ということで、まずTPVBをやらないし、TPVBカテーテルなんてさらにやらないので基本的には参考になりません。
たしか無痛分娩領域でも硬膜外麻酔のボーラス投与 vs 持続投与の比較検討がされていたような。
硬膜外でも同じことが適用されるなら、
「0.2%ロピバカイン4ml/hr+0.2%ロピバカイン4ml1時間ごとにボーラス」
という硬膜外麻酔の維持の方法は実臨床でも使えそうですね?
J-RACE2022 合格体験記
2022年4月17日(日)
J-RACE2022 @沖縄
の合否結果が届き、無事合格でした。
JRACE2022
受験者数:213名
合格率:71.3%
JRACEの情報ってネットで探しても少ないので、受験予定の誰かの参考になればと思い、合格体験記を書いてみることにしました。
準備期間:約3ヶ月程度
使用参考書:
・問題形式で学ぶ区域麻酔と疼痛治療
通称青本。
区域麻酔領域で存在する唯一無二の問題集であるため、ほぼ全員が手を付けていると思います。
J-RACEの出題範囲に沿っているわけではないので、すべての問題について理解する必要はなし。
内容が若干古い。ブロックの手技についての説明は基本的には"ランドマーク法"でされているため、超音波の画像は一つもありません。
文章も訳されたものであるため、不自然な点が多い。
イラストは少なく、あっても分かりづらい。
解答が明らかに間違っているものもチラホラ。
この本1冊で戦うのは無理だと思います。
自分は青本は2周しましたが、かなりシンドかったです。
・周術期超音波ガイド下神経ブロック
通称ピンク本。
JRACEを受けない人でも持っている方は多いかも。
ひとつひとつのブロックについて非常に丁寧に解説されており、画質は粗いが超音波画像も豊富で分かりやすい。
日常臨床でもお世話になる機会が多いため、持っていてそんなに損はない。(高いけど)
JRACE対策の視点から見ると、すべての神経ブロックを網羅しているわけではない。
改訂第2版でも2014年出版のものなので、最近のブロックについては載っていない。
頭頸部のブロックに関しては載っていない。
・グレイ解剖学
グレイである必要は無いですが、解剖学の本は1冊はあった方が良いと思います。
区域麻酔を理解するには解剖学の知識は必要不可欠なので。
青本やピンク本でイメージが沸きづらい部分についてはグレイを参照してました。
・J-RACE合格者作成 手作り問題集1&2
Kindleで読める手作り問題集。
この問題集の存在を知らない受験生は多いと思われる。
各種ブロックや解剖の基本を確認するのに非常に有用。
この問題集の内容が易しいと感じるくらいまで理解が深まれば合格点には届くのでは。
自分はこの問題集は1と2をそれぞれ2周ずつしました。
ということで、行った準備としては
・青本 2周
・手作り問題集 2周
・ピンク本、グレイを行ったり来たり
・各種ガイドライン 通読
・直前講習受講
くらいかと思います。
直前講習は可能であれば受講した方が良いです。
直前講習で話されたテーマから何題も出題されていました。
沖縄の試験会場には時計は設置されていませんでした。
個人的には時間はそこまで余裕はありませんでしたが、1/3程度の人は途中退室していました。
問題を解くスピードに自信のない人は時計は持参した方が良いと思われます。
問題の形式などは初見でも特に驚くようなものではありませんでした。
超音波画像なども鮮明で見やすく、特に困ることはありません。
問題用紙、解答用紙ともに持ち帰ることはできません。
試験日が4月17日で合格発表が5月20日でした。
合格の通知は郵送で送られます。
以上、簡単ではありますがJ-RACEの合格体験記でした。
J○POTのように更新も必要ないですし、みなさんも是非JRACERを目指しましょう。
【No.1】末梢神経障害疼痛の患者において即時型プレガバリンと徐放性プレガバリンの比較(非劣性試験)
The Clinical Journal of Pain
Efficady and Safety of a New Sustained-release Pregabalin Formulation Compared With Immediate-release Pregabalin in Patients with Peripheral Neuropathic Pain. A Randomized Noninferiority Phase 3 Trial
May 2022
韓国の末梢神経障害性疼痛患者で新しい徐放製剤のプレガバリンが即効製剤のプレガバリンよりも劣っていないかどうかの調査
2017年-2018年 韓国の41施設
DM性末梢神経障害 or 帯状疱疹後神経痛(PHN)が対象
1日1回の徐放製剤 or 1日2回の即効製剤
12週間投与
評価項目:毎日の疼痛評価スコア
319人の患者のうち、
徐放製剤:154人、即効製剤:165人
2群のスコアの差は0.06:
薬剤に関連する副作用の発生率も 徐放製剤:2.6%、即効製剤:1.1% と有意差なし
12週間投与された韓国人においては
徐放製剤は即効製剤と比較して劣っておらず
副作用などの合併症も増えなかった
<ひとこと>
即効性プレガバリン製剤とは、「リリカ」のこと?
1日2回投与のリリカも、効き始めるまでは2週間程度かかり、即効性はあるとは言えない。
眠気や眩暈の合併症を訴える患者も多いので、朝夕という処方ではなく、眠前1回に出来るのはありがたいことかもしれない。
「一日に何度も薬を飲んだ方が痛み止めが効きそうな気がする」と感じる患者も一定数いそうではある。
患者のキャラに合わせて1日1回製剤と1日2回製剤を使い分けてみたい。